教皇、アマゾン地域を訪問、人身売買、暴力、性的搾取を批判(CRUX)

 

(2018.1.19 Crux  Vatican Correspondent  Inés San Martín)

 プエルト・マルドナド(ペルー)発-ペルー訪問中の教皇フランシスコは19日、アマゾンの南米有数の人身売買などの拠点とされているプエルト・マルドナド地方のマードレ・デ・ディオス市を訪れ、女性に対する暴力や性的搾取の現状を指摘。「女性に対する暴力は、『正常な事』ではありません。女性が地域社会で果たしている指導的な役割に目を向けない“男らしさ”の文化を擁護しているのです。ラテンアメリカで広く使われているこの言葉は、女性の経験や声を無視し、女性を熱狂的に性差別する態度を意味します」と強く非難した。

 教皇は、かねてから人身売買や“現代の奴隷制度”を「人類に対する犯罪」と糾弾している。世界では推定3500万人が人身売買の犠牲者となっているが、ペルーでも7万人が被害を受けており、犯罪行為の件数としては武器密輸や薬物取引を上回り、最も“利益の上がる犯罪”といわれている。専門家によると、アマゾンのジャングルは人身売買の主要中継点だ。

 19日に教皇が訪れたマードレ・デ・ディオス市は、人身売買の犯罪者が取り締まられることもなくいくつものルートを利用する地域とされ、ペルーで事実上の奴隷とされている人々が最も多くいる場所。その3割が繰り返し売春を強要されているという。「彼女たちは労働のための奴隷、性的な奴隷、利益のための奴隷。多くの女性が蔑まれ、屈辱を受け、終わりのない暴力にさらされています。彼女たちが踏みにじられるのを受け入れられません」と教皇は語った。

 そして、会衆に対して、この町の名前、「マードレ・デ・ディオス(神の母)」に言及し、「マリアは『母』であり、皆さんのマードレ・デ・ディオスは『母がいる場所』なのです。決して『みなしご』ではありません。母のいる場所でも、家族、地域社会の問題は消えないかもしれませんが、そうした問題に立ち向かう強さを見出していくことができるのです」と強調し、「それにもかかわらず、この地を『名もない、子供たちもいない、不毛な土地』にしようと望む者、悪事を行いやすい場所に変えようとする者がいることも、知っています。彼らは、他人を排除することでは満足せず、人を黙らせ、無視し、利益にならないものを捨てることで、優位に立とうとするのです」と、教皇がかねてから繰り返す『使い捨て文化』を強く批判した。

 さらに、他人の絶望的な苦しみに全く気がつかない、人間を疎外化する消費主義を、教皇は、消費することだけを考える「母なき文化」と呼んで非難し、地球もまた、その論理によって扱われ、自然は容赦なく利用され、「不毛で使い物にならないまま置き去り」にされ、人々も 同じ方法で扱われ、使われ。「役に立たないもの」として捨てられている、と広く世界の人々に向けて警告された。

 (翻訳・「カトリック・あい」山田恵子・南條俊二)

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 関連・(2018.1.21 バチカン放送抜粋)

 ペルー訪問中の教皇フランシスコは20日夕、トルヒーリョのアルマス広場で、人々と共に聖母に祈りを捧げられた。広場の一角には、ペルーで崇敬を集めるオトゥスコの「扉の聖母」像が安置され、聖母に対する信心の篤い多くの信者たちがこの祈りに参加した。

 教皇は、ペルーの人々を守り続ける「扉の聖母」を「いつくしみと希望の母」として示され、「聖母は私たちを守るだけでなく、朽ちることのない、真のいのちの道の扉へと導きます。イエスは、誰一人、その扉の外に残ることを望まれません」と話された。

 そして、ペルーの人々の生活と家庭の原動力である女性たちの存在、その静かな希望の力、信仰の証しに感謝と信頼を寄せられるとともに、ペルーやアメリカ大陸で社会の傷となっている、女性に対する殺害や暴力に触れ、これらの状況と闘うための法整備、あらゆる形の暴力を拒否する文化の推進を訴えられた。

 教皇は「いつくしみと希望の母、『扉の聖母』が私たちに道を示し、悪と無関心から守り、出会いの文化といつくしみの心をもたらしてくださるように」と祈られた。

 

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2018年1月22日