バチカンと中国政府が司教の扱いで”合意目前”に(Tablet)

( 2018.1.29  Tablet  Christopher Lamb )

   関係筋によると、バチカンと中国政府が司教たちの選任についての合意を目前にしている。合意すれば、両者の外交関係の歴史的復活への道を開くことになりうる。

  米紙ウオールストリート・ジャーナルとロイター通信が伝えた関係筋の話では、司教たちの選任という、これまで難航した問題について、両者が数か月以内に基本合意文書に署名する運びとなった。

  合意内容は、教皇フランシスコは中国政府管理の「中国天主教愛国会」所属の7人の司教の破門を解き、それを条件に中国政府は今後の司教叙階の権限をバチカンに与える、というものだ。

  中国のカトリック教会は現在、教皇に忠誠を誓う「地下教会」と中国政府が管理する「中国天主教愛国会」に所属する教会に分かれているが、この合意は両教会の和解を目的としている。

  「これは重大な合意ではないが、今後10年あるいは20年の間に状況がどのようになるか分からない。今よりもっと悪くなるかもしれない」と関係筋はロイター通信に語った。

  司教の選任の問題は、中国の文化大革命を受けてこれまで70年にわたって絶たれていた外交関係を完全に取り戻そうとするバチカン内部で主要な議論となっていた。カトリック教会の司教はすべて教皇によって選任され、愛国協会の教皇の許可を受けない司教叙階が自動的に断交へとつながった。

  前教皇のベネディクト16世は2011年に愛国協会の黃炳章師が司教に選任されたのを受けて、同司教を破門した。だが、関係筋によると、バチカンは、破門を解かない限り可能にはならないものの、彼を88歳のPeter Zhuan司教を後退させることを提案した、という話が浮上しており、中国人の高位聖職者、前香港司教の陳日君・枢機卿から強い批判を浴びている。枢機卿は「バチカンは中国のカトリック信徒たちを売り払おうとしている」と非難、フェイスブックと自身のウエブサイトでそれを公表し、教皇と中国問題に関するバチカンの担当者の間の意見対立を示唆しようとした。

  これに対して、バチカンは強い否定で応え、中国との交渉の最高責任者である国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿はイタリアの地元紙に対して「個人的な見方は、中国のカトリック信徒たちにとって何が良いことであるかの判断を独占するものではない」と語っている。

バチカンと中国政府の詳細な合意予定の内容はまだ明らかになっていないが、中国政府は司教選定の過程で何らかの権限を持つ可能性がある。冷戦時に共産圏の政府が司教選定の際に拒否権を行使したのと同じような権限だ。

いずれにしても、合意が成立すれば、1951年の国交断絶以来バチカン外交の大きな課題となってきた中国との国交回復につながることになりうるのだ。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

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2018年2月5日