・シカゴの枢機卿「教皇は使徒的勧告『愛の喜び』で、教会の革命的ビジョンを示した」(Tablet)

(2018.2.9 Tablet  James Roberts)

使途的勧告『 Amoris Laetitia(家庭における)愛の喜び』は、家庭司牧に対する新しい、歴史的な回答だ

 米シカゴのブレイズ・カピック枢機卿が9日、英ケンブリッジ大学聖エドモンド・カレッジでのVon Hugel Institute年度講義で講演。教皇フランシスコの家庭に関する使徒的勧告「 Amoris Laetitia愛の喜び」は「カトリック教会にとって、家庭と影響を与え合い、家庭を司牧する方法において”革命的”な新たな出発を示すもの」と述べるとともに、勧告に対して起きている批判については、「”結婚と家庭についての理想的な考え”にこだわりすぎている」との考えを示した。

 枢機卿は、家庭生活が「以前とは大きく異なっている」と語り、人生の道を見失い、先行きが見えなくなっている多くの人々の存在が「家庭を司牧する新たな方法を見出すことを、教会に強く迫っている」と語った。家庭司牧でとるべき新しい形について、枢機卿は、バチカンのピエトロ・パロリン枢機卿・国務長官が最近示した受け止め方― Amoris Laetitiaは、カトリック教会に“paradigm shift(劇的な発想の転換)”を求めるもの、という見方―を支持した。

 米国の著名な哲学者で科学者、故トーマス・サミュエル・クーンは、彼の最高傑作とされる著作『科学革命の構造』で「科学の革命は新たな画期的学説に触発された“paradigm shift”によって起きる」と主張したが、カピック枢機卿は、 Amoris Laetitiaは「私たちの司牧の方法に関する大きな転換を示すものに他なりません」と言明。「この勧告は、教皇による行動への呼びかけ」でもあるとし、今日の家庭に関係する新たな司牧の在り方を一連の”解説的な原則”をもって示し、その6つの原則はともに“paradigm shift”を推し進めるものであり、そのすべてが教会の司牧にとって深い意味をもっている、と説明した。

 枢機卿は、まず、家庭は、神が人とどのような関係を持つかを明らかにするために、神が選び特権を授けられた場である、と述べ、結婚生活は「多くの異なった現実でできた、やりがいを起こさせるモザイク」(Amoris Laetitia38項)であり、教会は、結婚を「抽象的で理想化」された仕方で示すことをかえねばならない、と語った。そして、その意味するところは「神ご自身の意志の表明は、教会の結婚の理想にかなう人々に限定されることはない。それは、「真に自然な結婚と、他の宗教の伝統に見出される結婚の形にも、見つけることができます」(AL77項)とし、さらにAL301項を引用して、「『例外的』な事情のある人がすべて成聖の恩恵のない大罪の状態にあるとは、もはや言うことができません」と説明。そして、これらすべてが教皇フランシスコが進めておられる壮大な”パラダイム・シフト”を構成している、と強調した。

 第二の原則は、一般信徒の声にこれまでよりもずっと大きな注意を払わねばならない、ということ、としたうえで「純粋に協業的な教会では、知識を持っている者と持っていない者に上下関係の区別はない」と語り、「権威主義的あるいは父長的な人々とのやり取りの仕方は、“accompaniment(寄り添い)”に取って代わられるべきだ」と主張。教会の新たな方向は、聞いて、学ぶ過程を含めた「寄り添いとしての司牧」を実現しようとするもの、と述べ、”寄り添い”はまた、「教会の教えを形作る行為」であり、まさに”革命”だ、と付け加えた。

 枢機卿は、”パラダイム・シフト”における第三原則に話を進めた。それは、神が啓示されたものは何かを識別する必要な要素として、信徒の良心を確認することだ。結婚したカップルと家庭によってなされた良心の判断は、「彼らの人生の詳細のための神の直接の導きを意味するもの」だとして、良心の声は、「理想の姿についての教会の理解といくらかの距離を置いた、人生に必要なことをとてもはっきりと確認できる」、もかかわらず、(同303項を引用して)「新しい成長の段階」に進むことをも求めている。そして、このことは第二バチカン公会議がまとめた「現代世界憲章」に見られる良心についての理解を「完全に包含」している、と強調した。

 さらに第四の原則として、結婚のための神の計画についての教会の理解は、「信徒の洞察」とともになければならない。教会は「実際の家庭の具体的な状況」に耳を傾けねばならず、一般信徒が「教会全体の理解を助け、結婚と家庭生活を真の充足の源としていく」ように招かねばならない。彼らは「抽象的な理想」と「実際の現実」の間のかずかずの緊張にいつも対処しており、とても重要なことは、彼らの洞察が、希望を奮い立たせるやり方で、教会が結婚と家庭のための神の計画を実現するのを助けるのだ、と述べた。

 第五の原則について、枢機卿は「寄り添う」という考えに立ち戻り、「現実の変革」は、小教区共同体において、「傷ついた人々」のための「世話、歓待、やさしさ」の文化を作るような司牧の取り組みに向けたものだ、と指摘した。彼は、離婚して再婚したカップルが聖体拝領をできるか否かというような悩ましい問いに答えるかわりに、「彼らが自分は破門させられたのだ、と感じないようにすべきで、むしろ、教会の生きた成員として生き、成熟できると・・思えるようにしなければならない」とするAL299項を引用し、教皇フランシスコがアルゼンチンの司教団に送った手紙の中で示した道を指摘した。また、脚注で、ALで教皇が示した教えに教会の一部に反対があることについて、枢機卿は第二バチカン公会議が出した教会憲章の25項を引用、「意志と理性によるこうした敬虔な受容の態度は、とりわけローマ教皇の真正な教導職に対し、たとえそれが教皇座宣言でない場合においても、示されなければならない」とした。

 「パラダイム・シフト」のまとめの最後の原則は、教皇の思いである、慈しみに尽きる、それが司牧の実践と教義にとっての含意となり、「慈しみをもって他の人々に寄り添うという、教会による司牧の実践は教義の進歩を告げ、形成するものであるべきだ」「教義の進歩は、結婚と家庭生活についての道徳的な教えを、神の限りない慈しみのレンズを通してみるようにとの招きに、いつも心を開くことについてなされる」と語った。なぜなら、神は、「私たちの時に、彼がしているすべてのことを明らかにするために、特別な場として、家庭を選んだからだ。

 Amoris Laetitiaを批判する人々について、枢機卿は、そうした人々の中には、この使途的勧告の内容を誤解している人がおり、教皇が勧告で示している「全体論的」なアプローチをとることに失敗している、と指摘し、「あらゆる複雑に絡まった状況の中にある現在の人々の現実の生活に実際に寄り添おうとせず、結婚と家庭についての理想的な解釈に視野を限定しているのです」と批判した。

 枢機卿がここで述べたことで、批判者たちが満足するか、沈黙するか。間もなく明らかになるだろう。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

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2018年2月16日