(2018.5.20 Crux Vatican Correspondent Inés San Martín)
ローマ発―教皇フランシスコが20日、新たに14名の枢機卿を任命する、と発表した。この中には、イラク、ポルトガル、イタリア、ポーランド、ペルー、日本、マダガスカル、そして教皇庁の高位聖職者複数が含まれており、日本からは前田万葉・大阪大司教(写真)が選ばれた。親任式は聖ペトロと聖パウロの祝日、6月29日に開かれる枢機卿会議で行われる。
14人のうち、教皇選挙権を持つ80歳未満は11人。教皇は、新任枢機卿の出自が多国・多地域にわたっていることは「この地球上に、神の慈しみ深い愛をあまねく説き続ける教会の普遍性」を示すもの、と説明している。
また、6月29日の親任式を終えた後の枢機卿の総数は227名、うち126名が教皇選挙権を持つ80歳未満となる予定。福者パウロ六世が教皇時代に定めた総枢機卿枠200人、教皇選挙権を持つ枢機卿枠120人を大きく超えることになる。教皇フランシスコが2013年に就任以来、新枢機卿選任は2014年以降、毎年”定例化”している。
新任の枢機卿のうち、教皇選挙権を持つ80歳未満の11名はバチカン放送日本語版によれば以下の通り。(発表順・敬称略、括弧内は出身国・年齢・所属修道会等)
・ルイス・ラファエル・サコ、カルデア典礼バビロニア総大司教(イラク、69)
・ルイス・ラダリア、教理省長官(スペイン、74、イエズス会)
・アンジェロ・デ・ドナーティス、ローマ教区教皇代理(イタリア、64)
・ジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチウ、国務省総務局長官代理、駐マルタ騎士団特別使節(イタリア、69)
・コンラート・クライェウスキ、教皇慈善活動室責任者(ポーランド、54)
・ジョセフ・コーツ、カラチ大司教(インド、72)
・アントニオ・ドス・サントス・マルト、レイリア=ファティマ司教(ポルトガル、71)
・ペドロ・バレート、ワンカヨ大司教(ペルー、74、イエズス会)
・デシレ・ツァラハザナ、トゥアマシナ大司教(マダガスカル、63)
・ジュゼッペ・ペトロッキ、ラクィラ大司教(イタリア、69)
・トマス・アクィナス・前田万葉、大阪大司教(日本、69)
また、教皇は教会への奉仕における貢献者として、以下の80歳以上の3人を新たに枢機卿会に加えられた。
・セルジョ・オベソ・リヴェラ、ハラパ名誉大司教(メキシコ、86)
・トリビオ・ティコナ・ポルコ、コロコロ司教(ボリビア、81)
・アクィリーノ・ボコス・メリノ神父(スペイン、80 クラレチアン宣教会)
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
日本に新枢機卿が割り当てられた意味を真摯に受け止めたい
(解説)日本の枢機卿ポストは、東京大司教だった白柳誠一枢機卿が2009年12月に逝去されて以来、空席が続いており、現教皇の選出にも与れず、新枢機卿の誕生が長く待たれていた。
この間に、特にフランシスコは、教皇就任以来、世界教会を活性化させる一環として、世界中に枢機卿の任命を積極的に進めておられ、アジア地域では現在、信徒の多いインド、韓国、ベトナムに複数の枢機卿がいるのは当然として、日本よりも信徒の少ないタイにも複数のほか、ミャンマーなどにも新任が相次いでおり、日本は枢機卿新任から取り残され、教皇、バチカンの距離は遠くなるばかり、との懸念が強まっていた。
空白だった枢機卿ポストが埋められるのは7年半ぶり、また、日本から枢機卿が新たに親任されるのは2003年の濱尾文郎枢機卿(2007年11月逝去)以来約15年ぶりとなるが、失礼ながら、今回の新任は、日本の教会における諸問題への解決に顕著なリーダーシップを発揮した実績が評価された、というよりも、アジアにおける日本教会の”異常”ともいえる枢機卿長期空白を解消するとともに、教皇が進める世界教会の改革の中で、日本にも高位聖職者の一致協力した前向きで具体的な努力を促す目的がある、と真摯に受け止めるべきだろう。
なお、前田大司教は、1949年 3月 3日、長崎県南松浦郡新上五島町仲知 生まれの69歳。1975年 3月19日司祭叙階、2011年 9月23日広島教区司教に叙階、2014年 9月23日大阪教区大司教に着座している。また、日本の現役大司教は現在、前田大司教のほかに、昨年11月着座の菊地功・東京大司教(59歳)、 2003年着座の髙見 三明・長崎大司教(72歳)がおられる。
(「カトリック・あい」南條俊二)
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