・教皇の”性的虐待対処法”は一般信徒の指導者、運動体に対してなお曖昧(Crux解説)

(2019.5.10 Crux Elise Harris)

 ローマ発-何十年もの間、カトリックを悩ませ続けるさまざまな性的虐待スキャンダルの最中に、そのほとんどに聖職者-司祭、司教、大司教から枢機卿までが関与し、さらに修道会の会員にまで広がっている。だが、最も長引き、苦痛なスキャンダルのいくつかを含めて、教会で指導的な活動を主導する一般信徒も、少数ながら関与している-ペルーの信徒、ルイス・フェルナンド・フィガリと彼の強力な信徒団体Sodalitium Christianae Vitae(SCV)などだ。

 そして、そのような虐待に現地司教や他の教会指導者の果たすべき役割は、 長い間、教会法の中の盲点とみなされてきた。だから、性的虐待スキャンダルの法的側面に関する二人の専門家が、教皇フランシスコの自発教令の一般信徒の運動にとっての意味について問われた時に、彼らが若干、対照的な答え方をしたのは、もっともだ。

バチカンの筆頭検察官であり、虐待問題で頼りにされている男、マルタのチャールズ・シクルナ大司教にとって-具体的に一般信徒の団体創設者たちに言及はしなかったがー自発教令の規定は十分満足のいくものだ。Cruxの取材に対して、大司教は、一定の一般信徒の指導者については、修道者の表題にある規定の対象に含まれる、なぜなら「自発教令が修道会の指導者たちに言及する際、『聖職者である指導者』とは言っていないからで、同様に聖職者でない女性たちも含まれています」とし、一般信徒の指導者も対象となるが、「彼らは、奉献生活の協会か使徒的生活の会である必要がある」とも述べた。

 9日に公表され、6月1日に発効、3年を試行期間とする自発教令は、教皇の権威の下で教会法を変えることを意味する。「Vos estis lux mundi(You are the light of the world=あなた方は世の光)」を表題とし、教会の掟に反する犯罪を扱う際に、いかに対応すべきかを定めるものだ。

 今回の新たな規定でカバーされない共同体は、カトリック文化・環境協会(ACCA)と同じカテゴリーに入る。ACCAはシシリー島のカトリック一般信徒による団体で、その指導者、ピエトロ・アルフィオ・カプアーナ(75)は2017年8月に、当時未成年だった少女7人を性的に虐待した容疑で逮捕されている。

 だが、似た団体のSCVは自発教令による規定の対象となる。フェルナンド・フィガリのSCVは使徒的生活の会としてバチカンから公認されているが、フィガリを巡るスキャンダルが起きている。彼はSCVに参加していた未成年と若い成人の男性たちを虐待したことが公けになった後、2017年にバチカンから制裁を受けている。

 ACCAのようなケースは、教会法上の正式な立場を持たず、現地司教が責任を持つと考えられており、現地司教にとっての誘惑は、虐待の問題を司法当局に任せようとすることだろう。

 好ましくないことが起きた時に、このようなカトリックの信徒団体とその一般信徒の指導者が、正確にどのように扱われるのか、教会的な見地からまだはっきりしない。だが、シクルナ大司教によれば、これらの団体のいかなる問題も、問題が起きた国のバチカン大使に持ち込まれるべきだ、といい、「この問題は、バチカンの現地駐在大使が対応する必要があるでしょう… 聖座の助けを借りて」「秘訣は、自分に何ができるか、教えてください、と”本部”に求めることです」としたうえで、「法規は、教会で起きる可能性のある問題すべてに対応するものではありません」と注意した。

 法規がすることは、「他の形の犯罪、経済、金融犯罪など、今回の自発教令に示されていない犯罪に対応できるような青写真を提供すること」であり、使用できる青写真は存在する」と大司教は説明した。

 「今回の自発教令の規定は修道会の男女総長を対象に含む」とする一方、一般信徒の創設者・会長については具体的に言及されていないが、彼らも対象とされていると”類推”される、と述べ、その意味でバチカンの承認を得ている段階の一般信徒の指導者は、従来の規定の対象だったが、これらの団体の問題は、教会法において「はっきり異なる」問題を構成している、と述べた。

 大部分が1983年に作られた現在の教会の懲罰法規の見直しは数年にわたって続けられてきた。アリエッタ司教によると、古い法規によると、「修道者と司祭の役割はもっと考えられていた」が、「教会で地位を占める一般信徒については、規定や一般規範で、まだ認識されていない」「今回の規範ではなく、一般規範で再考されています」と語り、教会法における一般信徒とその指導者についての問題は、懲罰規範の見直しの中で「進展している」と説明した。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

 

 

 

 

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2019年5月11日