・教皇、2月に聖職者性的虐待問題で全世界の司教代表と協議(Vatican News)

(2018.9.12 Vatican News Christopher Wells)

   教皇フランシスコが、全世界の各国司教協議会の代表たちをバチカンに招集し、未成年者と成人弱者に対する性的虐待の防止について協議する会議を開くことになった。12日に終了した枢機卿顧問会議の内容について説明する同日午後の記者会見で、バチカン広報局次長が枢機卿顧問会議の声明発表で明らかにした。

 枢機卿顧問会議の声明によると、この会議は来年2月21日から24日にかけバチカンで開く。声明は、今回の枢機卿顧問会議で、虐待問題について「教皇と、詳細に検討した」という。

(「カトリック・あい」翻訳)

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聖職者性的虐待問題の抜本解決へ「臨時シノドス」求める動き(CRUX)

(2018.9.2   Crux 

 ”臨時シノドス(全世界代表司教会議)”は、カトリック教会を巻き込んだ聖職者による性的虐待問題に根本的な解決のカギとなるのか?-ここ十日間に、米英の司教3人が、世界のいくつかの地域で新たに表面化している「性的虐待と隠ぺい」に焦点を当てるシノドスの開催を求める書簡を、教皇フランシスコあてて、相次いで送っていることが明らかになった。

 最初に書簡を送ったのは英ポーツマス教区長のフィリップ・イーガン司教。8月22日付けで、聖職者の生活と司牧に関して臨時シノドスを開催するよう要請し、「聖職者による性的虐待は、カトリック教会で世界規模の現象となっているように見えます」「カトリック信者として、司教として、このようなことの数々が表沙汰になったことを深く悲しみ、恥ずかしく思っています」と訴えた。そして、臨時シノドスで話し合われるべきテーマとして、「司祭、あるいは司教のアイデンティティー」、「司祭のライフスタイルと独身生活への支援に関する指針」、「司祭と司教の生活のルール」「司祭と司教の説明責任と監督についての適切な方法」を提案した。

 この一週間後の8月29日に、米ダラス教区の司教たちと司祭たちを代表する形で、エドワード・バーンズ司教が、教皇に対して臨時シノドス開催を求める書簡を送った。書簡では、「聖職者による性的虐待と高位聖職者によるその隠蔽、(神と教会への)忠誠心の欠如によって引き起こされた現在の教会の危機は、大きな害をもたらしています」としたうえで、臨時シノドスで話し合うべきテーマとして「子供たちと弱者のケアを保護措置」「被害者への手当」「聖職者のアイデンティティーとライフスタイル」「教会共同体社会における健全な人間形成の重要性」を挙げた。

 翌日の30日には、米フィラデルフィアのチャールズ・チャプット大司教が教皇に送った書簡を公表し、10月に予定している若者の育成や召命についての通常シノドスを中止し、代わりに、司教の生き方に関するシノドスを計画するよう求めた。

 このような3人の司教の提案が、世界の他の司教たちの支持を得られるかどうか、まだ不明だが、そうした会議の招集・開催がタイミングよく実行可能か、という問題もある。

 教会法によると、シノドスは「世界の異なった地域から選ばれた司教たちの集まりで、教皇と司教たちの密接な一致を育てるため、信仰と道徳の保持と成長、教会の規律の順守と強化について助言をもって教皇を助けるため、そして、世界の教会の活動に付随する問題を検討するために、決まった時に開かれる」とされている。

 シノドスは、2年ないし3年おきに、ローマで開かれるが、会議には三つの形がある。通常総会-10月に予定されている若者をテーマとするものに代表される。特別総会-来年に予定されるアマゾン地域のように、世界の特定の地域に限って開くもの。そして臨時総会-「速やかな問題解決」を必要とする問題を取り扱うために招集されるもの、だ。

 米インディアナ州の聖メインラッド神学院で教会法を教える一般信徒で教会法弁護士のマイケル・ダニガン氏は「ある意味で、臨時シノドスは、現在起きている危機にぴったりの会議のように思われます。今のスキャンダルへの対応は、まさに、喫緊に取り扱うべき課題ですから」とし、「でも、別の意味では、これとは違う形と仕組みの方が、もっと効果的かもしれません。計画し、準備し、何百人もの参加司教を選ぶ作業が、信徒たちに安心感を与える形ですみやかになされるのを、想像することは難しい。航空母艦を海で回頭することは可能だが、素早くはできないのと、同じです」とCruxに語った。

 臨時シノドスは通常シノドスよりも規模が小さく、主要な出席者は、東方教会の代表者たちと世界の各国、各地司教協議会の会長たち。過去に開かれたのは1969年、1985年、2014年の三回だけだが、いずれも”速やかさ”を要するものではなく、緊急の課題に取り組むものでもなかった。

 第二バチカン公会議が閉幕した直後に招集された1969年の会議では、公会議の結果を受けたバチカンとの関係で各国、各地の司教協議会の役割が協議された。1985年の会議は、公会議閉幕20周年を記念して招集され、2014の会議は家庭生活をテーマに二回連続で開かれた会議の一回目で、教皇が呼びかけた、家庭問題についての”識別の過程”の一部をなすものだった。通常シノドスよりも規模は小さかったが、準備に要した時間は変わらなかった。

 理論上はシノドスの臨時総会は、通常総会に比べて速やかに招集される。司教協議会が代表を選ぶために会合をする必要がなく、いくつかの位階的な手続きを省略できるか、短くできることになっているからだが、実際にはそのような例はない。

 ダニガン氏はまた、何がシノドスで、何がシノドスでないのか、を考えることも重要、と言う。「それが、シノドスと公会議を区別する助けになるからです。公会議では、司教たちが教皇とともに、運営権を行使しますが、シノドスは違います。シノドスでは、司教たちは教皇に助言するだけの機能しか持ちません」。それともう一つ考えておかねばならないのは、シノドスが本来、司教たちの会合だということである。一般信徒も会合に招かれ、審議に参加できるが、あくまでオブザーバーとしての参加だ。

 他の例としては、聖職者の性的虐待と隠ぺいが明るみ出てひどくたたかれているオーストラリアで2020年に予定される同国の「全体会議」がある。全体会議は、バチカンの賛同を得る必要があるが、出席者として、全国の司教、司祭、助祭、修道会の会員、そして一般信徒と、教会の全構成員が対象となり、議決権をもつ-拘束力のある決定ができる。全体会議は、米国ではこれまで、19世紀にボルチモアで開催以来、130年以上開かれていない。米国の年配の信徒は、1884年の第三回全体会議で決まった「ボルチモア・カテキズム」に馴染みがあるだろう。

 全体会議では、司教だけに拘束力をもつ決議権があるが、一般信徒など他の出席者は助言する権利を持つ。「私見では、米国の教会にとって、全体会議を開くのが至極、適当です」とダニガン氏はCruxに語り、「2002年にボストンが聖職者による性的虐待の世界的危機の震源地になったように、2018年の現在の危機の震源地はワシントンとペンシルバニアを結ぶ所にあります。何人かの米国の司教たちは、2002年にダラスで開かれた司教たちの会合のような全体会議を開くことを提唱しています」と言う。

 しかしながら、全世界の教会のレベルでそのような会合が開かれる準備はない。ダニガン氏は「現行の教会法はその可能性を考慮に入れておらず、そのような仕組みを提供してもいません」と説明する一方、「大規模な国際的な協議と行動のための全体会議となれば、それは公会議とシノドスですが、一般信徒が、自分たちの決めるやり方で大規模な国際会議を開くのを妨げるものは、何もありません」と語っている。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

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2018年9月13日