・教皇、米枢機卿に続いて豪大司教の“地位はく奪”-性的虐待問題に断固とした姿勢

 

(2018.7.31「カトリック・あい」)聖職者による幼児・少年への性的虐待とその隠蔽が欧米など世界の教会を揺るがし続けているが、教皇フランシスコはこれに関連して、7月28日の米ワシントンの名誉大司教、セオドア・マカリック枢機卿に続き、30日に、元オーストラリア司教協議会会長でアデレード教区長のフィリップ・ウイルソン大司教の辞表を受理した。両国の教会にいまだに強い影響力を持つ高位聖職者の事実上の”地位をはく奪”は、長引く聖職者虐待問題の収拾に対する教皇の強い決意の表れとみられる。

 Vatican Newsの30日の報道によると、教皇によるウイルソン大司教からの辞表の受理は、大司教がオーストラリアの裁判所から1970年代にある司祭が侍者の少年二人に性的虐待を行ったことを知りながらこれを隠ぺいしたとして有罪とされたのを受けたもの。

 定年まで8年を残している大司教は6月3日に1年の実刑を言い渡されていたが、これ以前の公判中の5月にアデレード大司教区での司牧責任者は降りたものの、容疑を否認し続け、大司教の地位を返上することを拒否。有罪判決が出た場合には、これを不服として控訴する意向を示し、控訴が退けられた場合に限って、地位を返上するとしていた。

 これに対して、同国の教会内外から強い批判の声が広がり、マルコム・ターンブル首相はじめ多くの政治家、さらに全豪司祭会議も、教皇に対して、大司教を解任するよう異例の要請を行っていた。

 今回の教皇によるウイルソン大司教の辞表受理について、全豪司教協議会会長のマーク・クラリッジ大司教が声明を発表し、「今回の教皇の措置は、性的虐待を受け、今も苦しむ人々にとって、いくらかの慰めになるかもしれない。だが、犠牲者が耐えている痛みは終わりません」と語った。

 またこれより前、28日付けのVatican Newsは、教皇フランシスコが28日、米ワシントンの名誉大司教、セオドア・マカリック枢機卿の枢機卿団からの退任を受理した、と報じていた。同日、マカリック枢機卿から辞表が提出されたのを受けたもの。同日のバチカン広報局の発表によると、これと併せて、教皇は、彼をすべての公務から外した。

*「カトリック・あい」解説*

 なお、25日付けのCruxによれば、同じ米国のボストン大司教で、聖職者による性的虐待問題への対応を教皇から任されているショーン・オマリー枢機卿は、マカリック枢機卿に対して最近、性的虐待の訴えが出されたのを受けて、毅然とした対応を訴えていた。

 マカリック枢機卿については、先月、ニューヨーク大司教区が調査委員会が、彼がニューヨーク大司教区で若い司祭として働いていた当時、侍者の少年に性的いたずらをしたと信頼できる訴えが出ていると判断したことを発表し、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト両有力紙も、彼が何十年にもわたって複数の性的虐待を繰り返していた、との記事を掲載。これに対して、オマリー枢機卿は24日の声明で、これらの新たな案件の判断は「速やかに、断固として」行わねばならない、と言明していた。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年7月31日