・教皇、チリの性的虐待問題の中心人物の司祭職をはく奪する異例の決定

(2018.9.28 Crux  

 ローマ発 – チリの教会を混乱に陥れている聖職者虐待問題の発端となったフェルナンド・カラディマ神父のバチカンの有罪判決から7年、教皇フランシスコは28日、彼の司祭職をはく奪する「異例」の決定を下した。

 バチカンが28日発表した声明は、この決定は「道義に適った形で、教会のために」なされた、としている。カラディマ前神父が有罪判決を受けたのは2011年で、その刑は、一生を痛悔と祈りで送ること、だった。

 カラディマの未成年者性的虐待は、チリの法律では時効が成立していたため、チリの裁判所で裁かれることはなかった。現在に至るまで、この男によって何人が性的虐待の被害に遭ったのか、精神的な虐待に合ったのか、暴行を受けたのか、あるいは心理的な操作をうけたのかも、解明されていない。

 1980年代から1990年代にかけて、カラディマは自分が担当していたチリのエリボスクの教会で、40人の青年を司祭に叙階させるという成果を上げた信徒運動で注目を浴びたが、その時の4人が後に司教となり「鉄の結束」と形作った。彼らは、長きにわたって、カラディマに虐待を受けた被害者たちから訴えを受けていたが、隠ぺいを続けていた。教皇はこれまでに、そのうちの司教2人の辞表を受理して事実上更迭し、うち1人、ホアン・バロスは隠ぺいの容疑で検事局から召喚されている。

 被害者の1人ホアン・カルロス・クルス氏はカラディマの司祭職はく奪の決定について、ツイッターに「この日が来るとは考えもしませんでした。虐待によって多くの人を破滅させた犯罪者です」と書き込んだ。「教皇フランシスコの判断に感謝します。何千人もいる被害者たちが、私のように少しはほっとすることを期待します」。

 バチカンは声明で、教会法331条に基づいて、教皇フランシスコは「彼の、至高の、完全な、速やかで、普遍的な権能を行使した」と説明した。

 カラディマの司祭職はく奪決定の翌日、性的虐待で2017年まで6年間の司祭としての業務停止の判決をバチカンから受けていたクリスチャン・プレチトに対しても、司祭職はく奪の決定が下された。カラディマが保守的な立場だったのに比べ、プレチトは左翼の人々のヒーローとされ、2人ともチリのエリートの仲間だった。プレチトは「誰とも友好的な、愛らしい熊」と言われたが、カラディマはそれとは正反対だった。これまでにバチカンの裁判所から下されていた刑の内容が、なぜ2人で異なっていたのかは、明らかでない。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

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2018年9月29日