・性的虐待の被害者、「”2月の会議”はバチカンにとって最後のチャンス」(Crux)

(2018.11.27 CRUX Faith and Culture Correspondent Claire Giangravè)

 ローマ発-欧米を中心にカトリック教会に深刻な信用失墜を引き起こしている聖職者による性的虐待問題に抜本的に対処するための全世界司教協議会会長会議が来年2月にバチカンで開かれるが、性的虐待の被害者の1人、マリー・コリンズ氏が23日、Cruxとのインタビューにインターネットで応じ、この会議は、バチカンにとって、この問題を真剣に受け止める”最後のチャンス”だ、と語った。

 「この会議の結果が、話し合いについての熱心さを示す言葉と将来のための約束以上のものでないなら、教会がこの問題に対して具体的な行動をとるのを何年も待っていた多くの人々にとって、”行き止まり”となるでしょう」と、会議の参加者たちに警告した。氏は、教皇がこの問題の深刻化を受けて設置した弱者保護委員会の前委員で、教会が説明責任を果たし、改革に踏み切るよう、一貫して主張を続けてきた。

 バチカンは23日に、2月の会議のための準備委員会の設置と4人の委員を発表したが、この4人の中に枢機卿9人による教皇顧問団のメンバーで、弱者保護員会の委員長であるショーン・オマリー枢機卿が入っていないことが、関係者の間で憶測を呼んでいる。

 これに対して、コリンズ氏は「この会議で最も重要なのは、どの枢機卿が準備委員会に参加するか、ではなく、何が具体的な議題になるのか、ではないでしょうか?」「何をこの会議で達成しようとするのでしょうか?具体的な変化がもたらされるのでしょうか?」と問いかけた。

 その一方で、準備委員に、アイルランド・ダブリンのダ-マッド・マーチン大司教が含まれていないことに注意を向け、マーチン大司教は聖職者の性的虐待が大きな問題となっている国で幅広い経験を重ねてきており、性的虐待の再発防止と児童保護に効果的な措置を策定・実施するという実績もある、と指摘。「大司教は、多年にわたって、再発防止策を大胆に推進し、この問題への誠意ある対処と犠牲者への手当てで、虐待被害者や信徒たちから尊敬を受けています。このように実際的な経験を積む方こそ、準備委員会に出るべきです」と訴えた。

  性的虐待の被害者と支援者たちは、2月の会議に次の3点を要望している。

 ①世界の全教会共通の再発防止策の実施決定。これは、教皇フランシスコが約束された“zero tolerance”(例外のない毅然たる対応)と整合性を持った者とする必要がある ②会議出席者は「弱者に対する性的虐待の案件の扱いについて、全教会指導者にとっての明確な説明責任に関して合意」しなければならない ③出席者は、「再発防止と説明責任について必要なすべての規定を機能させるために教会法のどこを改めるべきかについて、識別」することを求める。

 コリンズ氏によれば、カトリック教会における性的虐待防止の実態は、司教たちの対応と地域文化と法制度によって、劇的な変化を見せている国・地域も出てきている。「教会は弱者保護と指導者たちの説明責任についての世界的な対策に抵抗してきました。その結果、地域によって、取り組みに大きな差が生まれています」。また、教会が「秘密主義に憑りつかれている」ことも批判し、それが被害者に対する不正な扱いだけでなく、教会法上の裁判を妨げて来た、と指摘。

 司教たちが説明責任を果たすことは、被害者たちが2月の会議に望む主なポイントだが、同時に、誰が性的虐待の事案について調査をするのか、具体的な処罰の内容は何なのか、についての詳細な情報提供や、有罪判決の公表についても、具体的な審議、決定を求めている。さらに、コリンズ氏は、2月の会議の討議の内容を、関係文書と(注:決定される実施策の)最終期限について、一般に公表されることを希望。「会議の透明性が図られねばなりません。そして、どうにでも受け取れる言葉遣いや不明瞭な表現、実現できない約束は、お終いにしてもらいたい」と注文を付けた。

 また、会議に参加する被害者については、「犠牲者の立場で語り、この問題への対応について経験を重ねた支援団体から選ばれ、氏名や所属について隠すことはしないようにする必要があります」と述べた。

 コリンズ氏は2012年2月にバチカンが主催してローマで開いた、性的虐待危機に対処するための「癒しと刷新に向けて」と題するシンポジウムを回想し、「あの時も『始まり』とされていました。でも、あれから6年経って、私たちはまだ同じ状態にある。何も変わっていない」と、対応の遅さを改めて批判した。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2018年11月28日