・世界人権宣言70周年前に基本的人権の国際シンポジウム

Francis and Benedict back symposium exploring human rights

 Pope Francis with Pope Emeritus Benedict XVI

(2018.11.16  Tablet  James Roberts)

 国連の世界人権宣言70周年を前に、ラッツィンガー基金 (Joseph Razinger/Benedict XVI Vatican Foundation)が主催する「基本的人権と諸権利の間の対立」をテーマとするシンポジウムが15,16両日、ローマで開かれ、 教皇フランシスコと名誉教皇ベネディクト16世がともに、フェデリコ・ロンバルディ同基金会長に開会を祝う書簡を送った。

 「12月10日に、国連総会で世界人権宣言が採択されて70周年を迎えます。これはその歴史的出来事を祝うだけでなく、今日の世界で人権の理念を発展させ、実現することを考える機会となります」と教皇フランシスコは13日付け書簡で、次のように述べた。

 「私は、今年1月の外交団に対するあいさつで、人権宣言を取り上げ、このように申し上げました-人類家族を区別している分離の壁を取り除き、人間にとって不可欠な成長を助ける方向に向けられている、と。同時に、時がたつとともに、諸権利の中に変更が加えられていくー互いに反目し合うのではなく、多くの”新たな権利”が加わっていく-ことも強調しました。そうして一連の問題が明らかになり、権利についての考えとその基礎に深く関係していくのです。ベネディクト16世は、私たちの時代の差し迫った諸問題についてはっきりと警告し、思索家、司牧者として権威をもって、それに介入しました。それゆえに、20年前、こちらの大学は、当時ラッツインガー枢機卿だったベネディクト16世に”laurea honoris causa”を授与しました。ですから、私は、これから始まる学術的なシンポジウムが私たちの尊敬する名誉教皇の考えと真理を伝える権威に啓発され、勇気と深い思慮をもって人間の尊厳と成長を守るための根本的な問題を明らかにすることを期待します」

 また名誉教皇ベネディクト16世も12日付け書簡で語った。 「親愛なるロンバルディ神父へ。ご存知のように、数か月前に、今回の国際シンポジウムの計画を教えられ、即座に、それはとても有益な会議であり、素晴らしいことです、と申し上げました。特に、私にとっては、『諸権利の増殖』の問題と『人権の理念の破壊』のリスクについて腹蔵のない議論がなされることが重要と思われます。シンポジウムのプログラムに載っているように、人家族の共生の基礎を守ることは、現在の、根本的な課題であり、さらなる、秩序を持った見直しのテーマに値するものなのです。シンポジウムの全ての発言者、参加者に祈りをもって敬意と親しみを表明し、教会のため、そして人類家族のための貴重な奉仕としての働きを、主が祝福してくださいますように」

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

「”人権”が選り好みされている」「”権利”の増殖が民主主義的プロセスに破壊的効果」

(2018.11.16 Vatican News By Lydia O’Kane)

 ラッツィンガー基金が主催する国際シンポジウムが16日終了した。おもな発言者は、バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿、プリンストン大学のロバート・ジョージ教授、ハーバード大学のマリー・アン・グレンドン教授など。16日の会議での講演で、グレンドン教授は「世界人権宣言の普遍的な広がりと、その効果的な適用」について語った。

 講演で、教授は「諸権利の選り好みの態度」を取り上げ、人権の考えはそれ自身の成功の犠牲になっている、と指摘。この意味について、教授はVaticanNewsに「残念なことに、その力を見せる間もなく、あらゆる種類の利益集団がこう言うのですー『さあ、我々の協議のテーマとして人権を取り上げよう』と」。

 彼女はまた、テーマに合わないような諸権利の攻撃に触れ、それに十分に気を付けるべきだ、として、その理由を「人権宣言のような文書に載せられる諸原則が相互に条件を付けられているから。例えば、我々は自由を止めたくない、我々は平等を止めたくない、と言うけれども、この二つは常に緊張関係にあり、私たちが幸いにも手に入れている民主主義社会で生きている中での動的な緊張の一部をなしています」と説明する。

 さらに「権利の増殖は通貨価値を下げる-極めて破壊的な効果をもち、自由な民主主義社会で私たちが幸いにも手にしている『仲間の市民に話しをし、歩み寄りを図る』という正常なプロセスを知らぬ間に害する-それが民主主義の政治の全てであり、もしも、政治的なプロセスからその決定を外し、裁判所の全てか、無かの判断を裁判所に任すことにすれば、何が起きるか。敗者は怒りと失望で出ていき、救済されることはありません」。

 人権宣言70周年を振り返る意義については、「そうすることはとても重要です。なぜなら、人権の理念の乱用についての最も早い時期の、最も深遠な批判の一つが十年前にベネディクト16世がなさったものだからです。国連での演説で、普遍的な人権の理念を脅かしている問題の大半を詳細に示されたのです」と説明した。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2018年11月18日