・前教皇が、教皇フランシスコを批判する見方を「愚かな偏見」と強く批判(Tablet)

(2018.3.13 Tablet  Christopher Lamb)

 フランシスコが2013年3月13日に266代教皇に選ばれて5年経ったが、前教皇ベネディクト16世が自らの書簡で、自身と現教皇フランシスコの間に断絶がある、との見方を強く批判した。教皇庁広報事務局のダリオ・ビガーノ長官が12日、「教皇フランシスコの神学」についての解説書11巻の刊行について記者会見をした際に、書簡を公開した。

 明らかにされたベネディクト16世の書簡によると、前教皇は、教会内外にある「フランシスコは神学的、哲学的な人格形成を欠いた実務者にすぎない」「ベネディクト16世は現在のキリスト教徒たちの具体的な生きざまに関心を払わない神学の理論家だ」をとする見方は、「愚かな偏見」と指摘した。

 現在81歳の教皇フランシスコは、この5年間、その言葉や行いが多くの信者や信者以外の人々から称賛を浴びる一方で、一部のカトリック信者から強い批判も受けている。教皇は、教会が、難民や家のない人々を腕まくりして助けるような、慈しみにあふれた、"野戦病院”となることを求めているが、批判する人々の多くは、「道徳的な相対主義に陥っている世界に反対する創造的な少数派」としてのカトリック信者像を、世界的に著名な神学者であるベネディクト16世に重ね、彼を否定的に評価しているのだ。

 ベネディクト16世は 公開された書簡で、こうした見方は誤りだと言明し、教皇フランシスコを批判するのを止めるように求め、歴代教皇の間に「行動様式や気質に違い」はあれ、「内面的に一致」している、と強調している。また、教皇フランシスコの神学の解説書11巻について、「教皇は奥深い哲学的、神学的人格形成をされている方、だということを、正しく示している」と述べている。これらの本は、イタリア神学学会のロベルト・レポーレ会長がとりまとめ、バチカンの出版局から発行された。

 前教皇が現教皇を公に支持したのは、今回が初めてではない。2016年に「神の慈しみに絶えず言及している」として現教皇を称賛していた。2013年2月13日に過去600年なかった存命中の教皇辞任という衝撃的な行動に出た後、彼はバチカン庭園にある元修道院に住み、教皇が通常身に着ける白衣(教皇の権威の象徴であるモゼッタ=短いケープは外して)を着、自身を「名誉教皇」と呼ぶことを選択した。

 自身を「教皇」と呼び、白衣を着て、バチカンの中に住む者が二人いるということは、カトリック教会の歴史の中でこれまで予期しなかったことだが、教皇フランシスコは前任者を受け入れ、「家に賢い祖父がいる」ように振る舞っている。だが、ベネディクト16世が故ヨアヒム・マイスナー枢機卿の葬儀に弔辞を送り、「枢機卿は、舟(教会)が水浸しになり、ひっくり返るような事態になっても、主はご自分の教会をお見捨てにならない、という深い確信をもって生き抜きました」と称えたが、そのことをもって、二人を仲たがいさせようとする試みがあった。マイスナー枢機卿は、教皇フランシスコが使徒的勧告「(家庭のおける)愛の喜び」で離婚し再婚した人々に聖体拝領を受ける道を開いたとされることに、強く反対する書簡を教皇あてに出し、公開した枢機卿4人のうちの一人だった。(注・弔辞は、教皇フランシスコの勧告で示した方針を間接的に非難するもの、と受け取る向きがあった、ということを意味する=「カトリック・あい」)

 90歳のベネディクト16世は今年1月に、フランシスコに教理庁長官のポストを半年前に解かれたゲルハルト・ミュラー枢機卿を称賛する発言もしている。だが、同じ時に、ベネディクト16世の司祭叙階65周年の祝賀会も含めて、現教皇と前教皇の親交が頻繁に公けにされてもいる。ベネディクトはフランシスコに語っている。「あなたがイエスのなさったやり方で、慈しみの道を、神に向かって、イエスに向かって、歩み続けられるように、望みましょう」と。

 (翻訳・「カトリック・アイ」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

 

 

 

 

 

 

 

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2018年3月14日