・バチカンで環境回勅公布3周年記念会議、気候変動で”トランプ宣言”に挑戦(CRUX)

Vatican environment summit challenges Trump on climate change

Participants at the International Conference “Saving our Common Home and the Future of Life on Earth” at the Vatican July 5-6 to commemorate Pope Francis’s encyclical on the Care of Creation, discussesd the current state of climate change. (Credit: Claire Giangravè.)

 

(2018.7.6 Crux  Claire Giangravè)

ローマ発―トランプ米大統領が気候変動への国際的な取り組みを決めた2015年のパリ協定から離脱すると宣言して一年、環境問題に関する会議が、「われわれの共通の家と地球上の命の未来を救う」をテーマに5,6の両日、バチカンで開かれた。

  会議二日目の6日、教皇フランシスコは会議参加者に挨拶し、「パリ協定を達成するために、まだ多くのことを行う必要があるのを、私たち全員が知っています」とし、「地球環境の危機が最悪の結果をもたらさないように、すべての国の政府はパリの約束を守るために全力を傾けなければなりません」と訴えた。

 この会議は、教皇による環境回勅Laudato Si公布3周年を記念して開かれたもので、奇しくも、トランプ大統領のパリ協定離脱前言一周年と重なることになった。環境の専門家、活動家、聖職者、環境が問題になっている地域で暮らす人々など400人以上が参加し、現状分析にとどまらず、世界でこれから開かれる環境問題の主要会合も視野に入れた意見交換がされた。

 教皇は挨拶で「私たちの共通の家が置かれた状況への懸念が、私たちにとって大切な自然環境を目指した組織的な一致した努力に生かされていくことを希望しています」と述べ、具体的に、今年12月にポーランドのカトヴィツェで開く国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第24回締約国会議(COP24)で、パリ協定の目標達成のための具体的な合意がなされる重要性を指摘した。

 パリ協定は国連加盟の194か国が署名し、2030年までに温室効果ガスの排出量を各国が削減する目標を作成・提出・維持する義務と、当該削減目標の目的を達成するための国内対策をとる義務を負うこととしている。本来、指導的立場にあるはずの米国が”トランプ” 宣言で協定から離脱したため、欧州諸国の足元が揺らぎ、中国とインドが環境と経済成長のバランスの主張を強めるなど、義務履行にも齟齬が生じる中で、リーダーとなる国に空白ができている。

 そうした米国から”世界で最良の環境ジャーナリスト”とされているビル・マッキベン氏が会議に出席。「米国の機能不全をおわびしたい。綻びの修復に全力を尽くすので勘弁していただきたい」と、まず”謝罪”したうえで、「我々には技術があるが、対応が十分に早くなかったので、環境悪化を止められずにいる。そうした中で、希望は、環境保護に献身する若者たちの熱意と参加にある」と指摘した。

 一方、教皇は、「私たちの共同の家に向けた対話と努力は、必要な自然環境を養う努力の最前線で二つの人々のグループに場所を提供しなければなりません」とし、「この二つのグループは、今秋から来年に予定される二つのシノドス(世界代表司教会議)の主役―若者たちと、原住民、とくにアマゾン地域の人々-になります」と述べた。バチカンはこの10月に若者と召命の識別をテーマにしたシノドスを、さらに来年にはアマゾン地域全体に焦点を絞ったシノドスを予定しており、教皇の回勅Laudato Si と被造物に配慮した教皇の行動主義が、二つの会議で重要な役割を演じることになる。「現在の環境と気候変動の危機の結果に直面するのは若者です」と語る教皇は、「原住民の人々の土地が収奪され、略奪と”新型の植民地主義”によって、彼らの文化が踏みにじられるのを目の当たりにするのは、悲しいことです」とも述べ、一連のシノドスの重要性を強調した。

 教皇の話を聞いた出席者の1人、マーシャル諸島から参加したクリスティーナ・レイマース女史は、Cruxの取材に、「気候変動がもたらす影響と地球的な危機に対して、教皇が力をお使いになっているのは、とても素晴らしいと思います」とし、「最も影響を受けやすいのは、貧しい国々です。私は第三世界、貧しい国々の一つから会議に来ました。私たちがしなければならないのは、皆がこの問題に気づいてくれるようにすることです」と語った。

 グリーンランドから参加した男性は、自国を「気候変動のground zero(爆心地)です」とし、 “Big Ice(大氷盤”の融解-自分が生きている間に氷の厚さが5000メートルから2000メートルになってしまう―に言及。「あなた方が、私の最後の希望です。本当に、文字通り、あなた方はこの地球にとっての最後の希望なのです。(それなのに)何があなた方にやってくるのか、まったくお分かりになっていない」と参加者に注意を促した。

 教皇は、講演の中で”ecological conversion(環境的改心)”-実際的な答えと行動が必要だと気づくこと-を呼び掛け、「私たちが将来の世代に瓦礫と不毛の地と廃棄物だけを残してしまう、真の危機を迎えているのです」「時間を無駄にしている余裕はありません」と現状への真剣な理解を求めた。そして、気候変動対策のボールを前に転がすことは、国々の政府だけではできない、地方政府、市民社会、経済や宗教の組織も一緒にならなければ、前に進むことはできない」と強調、9月12日から14日にかけてサンフランシスコで開かれるGlobal Climate Action Summit(地球気候行動サミット)に向けて、「全世界の市民活動グループへの支援」を訴えた。

 また教皇は、世界の金融機関は「問題のもとでもあり、問題解決の力のもとでもある」として、人が人らしく成長していけるようにする”paradigm shift(発想の転換)”の必要を改めて指摘した。バチカンがIMF(国際通貨基金)と世界銀行に、そのような転換をもたらすようにもとめる請願書を準備しているように、宗教組織も、環境保護を支持し、とくに特に貧しい人々に影響を与えるような気候変動に対処する責任がある。

 ノルウェーの教会の名誉司教でReligions for Peace 名誉総裁であるギュンナー・ステルセット師はCruxとのインタビューで、「気候変動の問題は、創造物を支持し、原住民の人々を支持し、未来に向けた命の存在を支持する中で、諸宗教を集結させている」と述べ、「気候変動問題に関する運動に求められているのは、精神的分野、実存的分野、道徳的分野での取り組みであり、政治家と外交官が担当する分野ではありません」と指摘したうえで、「素晴らしいことは、(政治家たちが)我々が必要としていることを知っていることだ。だから、世俗的な政治的責任を持つ人々と宗教指導者、信者たちが、共に満足を得ることが可能なのです」と語った。

 気候変動が信仰一致の点において、活性化の力となることが証明されているが、教皇は「やりがいのあることが不足しているのではありません」と強調した。気候変動に関する政治には、地球的な取り組みを失速させるリスクがある一方で、この問題への宗教組織の現実的な関与に疑問を抱く向きもある。マッキベン氏はバチカン関係の諸金融機関は、すすんで脱化石燃料の推進に取り組んでいるのか、と問い、そうすれば、「炭素の排出量はローマに合ったものになるだろう」と付け加えた。

「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

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2018年7月7日