・「暫定合意」に中国の信徒-「地下教会」は批判、「地上教会」は肯定

(2018.9.26 「カトリック・あい」)

 バチカンと中国政府が司教任命について暫定合意し、合意書に双方代表が署名したが、当事者である中国国内のカトリック信徒たちの見方は、「地下教会」は批判と不安、と「地上教会」は期待と楽観で大きく分かれているようだ。ただ、「地上教会」の信徒にも、合意に否定的な見方がある。カトリック系のアジアのインターネット通信社UCAN (ucanews.com)が24日付けで伝えた中国内部からの貴重な声を日本語訳で編集してお伝えする。

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 福建省の閩東Mindong教区の(中国政府の支配を認めず、教皇に忠誠を誓ってきた)「地下教会」で活動しているある司祭は、教皇が承認した”違法”司教たちとミサをささげるのを拒む理由はない、とししつつ、「(そうした司教たちに)従順であることは必ずしも、同意を意味しません」と語り、これからは地下の教会共同体は存在できなくなり、(中国政府・共産党の支配を受ける)「地上教会」しか認められなくなるが、自分は決して、「地上教会」の中国天主教愛国会には加わらない、「圧迫が強くなって司祭を続けられなくなったら、故郷に帰ります」と苦しさをにじませた。

  「地下教会」の信者たちの間では、今回の暫定合意を批判し、教皇の判断に疑問を持ち、今後の成り行きに強い不安を示す声が目立つ。江西省のある女性信者は、司教たちが政府が指名を受け、教会を指導するのを認めるような、この暫定合意は受け入れられない、とし「違法な司教たちを認めるのは教会の原則を侵すもの。教会に行けなくても、家にいて、イエスに倣います」と語った。山東省の男性信者も、教皇が中国政府と司教任命権を共有することは、教会を中国政府に引き渡すことだ、と批判。なぜ教皇がそのような判断をしたのか理解できない、これでもまだ、教会は「イエスの教会」なのか、「自分は絶対にこのような司教たちが関わる行事には出ない」と言明している。河北省の石家荘の男性信者は、今回の暫定合意を「露骨な教会の売り渡しだ」と非難。河南省・南洋の男性信者は、暫定合意で、当局に逮捕されている司教たちと信徒たちが釈放されることに期待を示す一方で、「地下教会が潰される」という噂が現実になることを懸念している。

 一方、政府の支配下にある「地上教会」の信者たちは、暫定合意を前向きに受け止めているようだ。UCANの取材によると、広東省のある男性信者は、中国の教会が結婚と家庭の問題、司祭の振る舞いを含めて信仰の面で最低の水準に達しつつある、とし、合意を機に、教皇が中国の教会に信仰と司牧のメッセージを直接伝え、司教や司祭の質を高めてくれることを期待している。内モンゴル自治区の包頭市に住む男性信者は、合意は皆が長く待ち望んできたこと、教皇を信頼している、とし、教会への圧力もすぐになくなる、習近平・国家主席は立派な人物だから、と述べた。河北省・滄州の男性信者も、教皇の判断は間違っていないと信じる、中国政府も私たちを迫害することはないだろう、法律も常識に沿った形で変えられていく、と言う。山西省・太原の女性信者も、教皇の判断を歓迎し、少なくとも自分のいる教会が脅迫を受けたことはないし、当局が十字架を破壊しているのは、当局が不快に思うような問題を起こしている教会だ、と語った。

 ただ、「地上教会」の信者の中にも、否定的な見方がある。河北省の「地上教会」のある男性信者は、UCANに、自分は暫定合意書の署名に賛成しない、と述べ、「中国は今、宗教に対して厳しい圧力をかけています。教会の建物から十字架を取り上げるばかりか、インターネットで宗教関係の情報をやりとりするのも厳しく規制している。言論の自由はありません」「私は暫定合意に賛成する司祭たちによるミサに出るつもりはない。違法な7人の司教の否認を続けます。もし中国全土の教会が身を落とす(政府・共産党の支配下に入る)なら、私は家の中で祈るしかなくなるでしょう」と悲観的な見通しを語っている。

 

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2018年9月26日