・「教皇は中国を偉大な国とみておられる」とパロリン国務長官、中国記者に-誤ったメッセージの懸念

(2019.5.14 カトリック・あい)

 13日付けのVaticanNewsによると、バチカン国務長官のパロリン枢機卿がこのほど、中国共産党機関紙「人民日報」系の英語紙“Global Times”の記者から異例のインタビューを受け、中国とバチカンの外交関係の前向きな進展と難航している問題と疑問の解決に共に取り組む意思について語った。またこの中で枢機卿は「教皇フランシスコは中国を偉大な国というだけでなく、偉大な文化、豊かな歴史、叡智を持った国だとご覧になっています」と述べ、中国側の交渉相手をたたえるような発言が目立った。

 昨年9月に中国と同国内の司教任命に関する暫定合意に署名して以来、中国政府・党による”地下教会”への迫害が強化され、信徒たちから悲鳴の声が聞かれる中で、正式合意へ向けた交渉進展を期待をあらわにした、”過剰サービス”とも思われる発言は中国政府・党にそうした行為をバチカンが容認している、という、誤ったメッセージとして受け取られることが懸念される。

 VaticanNewsが伝えるインタビューの内容以下の通り。

 (2019.5.13 VaticanNews Linda Bordoni

 枢機卿は“Global Times”のイタリア人特派員と長時間にわたるやり取りを行い、まず、昨年9月の暫定合意について言及。中国側の交渉責任者との印象的な思い出を語り、中国における宗教の中国化、非中国的な共同体社会が中国文化の影響下に入っていく過程についての見解を述べた。

 *批判は承知、”正式合意”にまだ多くの問題

 枢機卿は、「平和の裡に信仰を実践したい、自分の国に前向きな貢献をしたい、と強く願う現実の人々の暮らしに関わる現実的な解決策」を目指す中国、バチカン双方の意思を強調したうえで、「世界の教会の内部からだろうと、中国国内からだろうと、あるいは他の所からだろうと、両者の長い対立の末に予期しないような展開がされていることに批判があるとしたら、驚くべきではありません」と語り、さらに、「そうした批判を表明される方々に理解、注意と敬意を示すことは、人間的で、キリスト教的だと思います」と付け加えた。

 そして、(注:暫定合意が正式合意になるための)全ての難しい課題が解決されたわけではなく、多くの問題がまだ残っていることを認め、「私たちは今、意欲と決意を持って取り組んでいるところです」と説明した。

*”中国化”と”文化的受肉”

 何年にもわたる中国の交渉責任者たちとの交渉の中で、記憶に残っていること、経験したことについて、枢機卿は、交渉の過程で必然的に起きた中断、心配、恐れを思い起こしつつ、双方に支配的だったのは交渉を前進させようとする意志だった、と述べた。また、交渉の中での良好な関係の醸成のために、特に重要なのは、親しみと友情が生まれ、双方が「互いの違いを超えて一致させる人間愛を共有できるようになった」ことと強調した。

*”教皇の中国への思い“は

 インタビューの終わりに枢機卿は、教皇フランシスコから中国のカトリック信徒たちへの「勇気をもって一致、和解、そして新たにされた福音宣教の道を歩んでください」という訴えを伝え、「教皇は中国を偉大な国というだけでなく、偉大な文化、豊かな歴史、叡智を持った国だとご覧になっています」と述べて、聖座の「中国は広範な世界との対話を始めるのを恐れることはない」という希望を強調した。「教皇フランシスコがおっしゃるように、私たちは、一致することによってのみ、平和の創造的建設者として、兄弟愛の毅然とした推進者として働き、“他に思いやりを持たないグローバル化“に打ち勝つことができるのです」と締めくくった。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年5月14日