・「カトリック教会の統治に一般信徒の参加が不可欠」国際神学委員会が報告(Tablet)

(2018.5.8 Tablet  Christopher Lamb)

 教会の管理運営にとって、ごく普通のカトリック信者の声は「欠かすことにできない」構成要素だ。小教区に一般信徒の助言を求める協議会の設置を義務化するように教会法を改める必要がある―カトリック教会の教えの定着を支援する国際神学委員会が3日、“Synodality in the Life of the Church”と題する提言を発表した。提言は教皇フランシスコの同意をえており、「シノドス(全世界司教会議)教会が直面する主要課題に対応するために活用する」という教皇の意向に肉付けすることを目的としている。

 提言によると、カトリック教会にとって最も重要な役割の一つは、共同の識別をするために用意される「合議制による教会」の必須の要素として、信徒たちに助言を求めることで、「一般信徒の参加が不可欠」としている。

 そして「一般信徒は、神の民の圧倒的多数であり、彼らの協議への参加―彼らの文化、社会活動の分野での専門的な知識や経験から、教会共同体の活動と使命について、大衆の信心について、一般的な司牧について、様々な発想を学ぶことが数多くある」と指摘。「それが、彼らから助言を得ることが、合議制の枠組みの中で識別のプロセスを始める際に不可欠である理由だ。取り組みの不足、認知された公開の話し合いの場―一般信徒が自分の意見を述べ、振る舞える場―の欠落や、一般信徒の声を軽視しがちな聖職者の心理からくる障害を、乗り越えることが必要」と述べている。

 フランシスコは教皇就任以来、シノドスを教会統治の手段として重視し、結婚と家庭生活をテーマに2014年、2015年の二回にわたって、全世界の司教たちをローマに招集して議論の場を持ち、さらに今年秋に若者の召命などをテーマにシノドスの開催を予定している。いずれの場合も、世界中の一般信徒の声を聴き、協議に役立てることを前提にしている。そして、シノドス以上に教皇が重視しているのは、ご自身が「ともに歩む」と表現する「合議制」の心理が教会に根を張るようにすることだ。2015年10月の演説で、教皇は「逆立ちピラミッド」の教会―一般信徒が頂点に立ち、下にいる司教たち、司祭たちに仕えられる教会―となるよう訴えた。

 今回の提言とりまとめの主役となったのは、カルロス・ガリ神父。アルゼンチン人の司祭で神学者、教皇の助言者の一人で、「民の神学」―ペロン大統領の政治思考に影響を受けた、解放の神学のアルゼンチン版―について幅広く執筆した、フランシスコの神学の構築者の一人と考えられている。その政治哲学は、民の求めを中心に置くが、一人の指導者に集中された権力を伴うものだ。

 提言は、司教と司祭は一般信徒の意向に「注意深く耳を傾け」ねばならず、同時に、教会共同体全体が「祈り、聴き、聞き分け、対話し、識別し、そして神の意志によりよく従って司牧上の判断をする際に助言するように、求められている」とし、教会のそれぞれのレベル―教皇が枢機卿の助言を受ける顧問会議から、小教区で一般信徒の意見を聞く「司牧協議会」に至るまで―で、シノドス型の体制をとることを提唱し、これは当面は当事者の自由な判断でされるが、実施を徹底するために、教会法の改定が「必要と思われる」と控えめながら、教会法改定を求めている。さらに、「合議制の教会」とは教会共同体を構成する人全てが参加し、責任を共有する場であり、それに重きを置く「合議制の仕組み」を明確化する方向で、「旧態依然とした教会制度」を現代化することも提言している。

 提言では、シノドスの歴史と神学的位置づけについても言及し、紀元後50年の第一回エルサレム教会会議に遡って、死に至るまで旅を続ける信者たちの「巡礼する教会」の考え方を支持しつつ、イエスの弟子たちが「主の道の信奉者」として知られたことを指摘。

 また、教会の「構成要素」として、シノドスは、キリスト教の最初の千年の間、重要な役割を果たし、中世になって機能を喪失したが、(16世紀の)トリエント公会議で息を吹き返した。これは、信仰者の感覚を通して一般信徒の中にあるものを考察した、ジョン・ヘンリー・ニューマンのような「預言者の声」のおかげだった。だが、教会のすべての構成員に洗礼が与える役割を強調することで「合議制」を再開したのは、第二バチカン公会議であり、閉会から二年後の1967年に、教皇パウロ六世がシノドスを再活性化した―としている。

 さらに、提言は合議制―一つのものとしての教会―と、協働制の違いについても強調している。後者は、司教に与えられた具体的な統治の役割に関するものだ。また、シノドスの取り組みは、ローマと対等であり、従属の関係にもあり、お互いを必要としている各国、各地域の現地教会の経験をも含んでいる。

 (翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年5月10日