・シノドス第3週:移民の若者と家族の現実への対応、デジタルの活用

(2018.10.19 VaticanNews Russell Pollitt, SJ)

 「若者シノドス」第三週の週末19日の定例記者会見では、移民の若者と家族の悲しい現実、教会はデジタルをどう使うかという問題が浮き彫りになった。

*教会に求められる移民の心のケア

 会見でまず発言したのは米国から若者代表として参加しているヤディラ・ビエイラさん。精神分析医など専門家とともに移民たちの世話をしているが、「移民の家族たちは心理的な不安、動揺、抑うつにさいなまれています。しばしば暴力にもつながります」と経験を語った。彼女は米国や他の国・地域で 移民たちの精神的な健康面でのケアをするよう教会に求めて来た。「教会は、家族を助けずに.若者たちを助けることはできません」とも述べた。

 彼女はまた、女性の役割についても言及し、「修道女たちがこのシノドスで議決権を与えられていないのは残念なことだと思います。女性たちは発言はできるが投票することができません。女性たちはとても重要な役割を持っており、教会員の霊的な成長に寄与しているのです」と訴えた。

 さらに、「LGBTI」*とされる若者たちの問題についても、「それを理由に教会から責められていると感じている人々を助けることも、教会の課題です。カトリック信徒の彼らは満足な司牧ケアを受けられず、教会は自分を必要としていないのだ、と感じています。それは大部分の信徒にとって真実ではない」と指摘した。

*注*世界の人口の2000人に1人は、生まれつき生殖系の構造に変異がある、もしくは男性あるいは女性を特定する染色体パターンが一般的なものと合致していない、といわれている。LGBTIの「I」が表す「Intersex」(インターセックス)とはこのような人を指し、男性、女性のどちらとしても認知できる、あるいはいずれの性にも属さないと認知できる。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーと同様に、インターセックスの人たちも認知、平等、人権を求めている。

 結婚してまだ間がない彼女はまた、自分の経験から「結婚する前は、人と寄り添うことはいいことだ、と考えていました。ですが今は、結婚した後の若い人たちに、教会がどのように寄り添っていくのか、を真剣に考える必要がある、と感じています」と語った。

 また、今回のシノドスでの司教たちの印象について、「他の人々の話を意欲的に聴き、学び、変わろうとする方も中にはいますが、それ以外の方は、まだそこまで行っていません」と厳しい評価を下した。

*殉教

 マロン典礼カトリック教会のヨゼフ・ナッファ司教は、会議で中東の現実について話し合われた、と述べ、「若者たちは、殉教するような事態に直面しても、信仰の証人になることを恐れません。教会は希望の一つ、現在の騒乱は信仰を証しする機会と考えています」と語った。

*デジタルの分野で聖職者としての務めを果たすには

 また、ナッファ司教はデジタルの分野での聖職者の務めについても言及し、自身が、若者たちとインターネットのオンラインでつながるアラビア語のプロジェクトを進めていることを明らかにした。

 このプロジェクトは、教会の教えに焦点を絞った「宗教科学研究所オンライン」で、刑務所にいる若者も含めて世界中の異なった場所にいる550人の学生たちが参加している、といい、「体が麻痺して親指しか使えない若者がその中にいることに、特に感動しています。このプロジェクトが始まる前は、この若者は寝たきりでしたが、今は世界中の人に触れられるようになった」とその効用を強調。このプロジェクトを通して、改宗する人も出てきている、と述べた。

 その一方で、現在、カトリック的な内容を伝えている、とするウエブサイトが多く存在するが、カトリックの教えを正確に伝えていない、という問題も指摘。「こうしたサイトをチェックし、カトリック教会の立場を反映するサイトかどうかを明確にするような部署を、バチカンに作る」ことを提案した。

 ガーナのエマヌエル・コフィ・フィアヌ司教も、デジタルの世界の活用に触れ、とくに神の言葉を若者たちに伝えることに関心がある、とし、「教会が、神の言葉を伝えるデジタル・プラットホームをもっと提供することが重要です。これは、若者たちを教育するだけでなく、宣教する者となるのを助けることにつながります」と主張した。

 .聖パウロ会のバルディル・ホセ・カストロ総長も、今シノドスの議論に参加した際、コミュニケーションに力点を置いたと述べ、「教会がデジタルの世界でどうのように生きるかが重要な問題です。これまで教会は対応を怠っていたわけではないが、まだまだやるべきことが沢山ある。世界規模のウエブは人間性を持ったウエブであるべきであり、教会は、この分野で、宣教の主役となるように若者たちを助けねばなりません」と主張。「若者たちはソーシャルメディアの世界の言葉と文法を知っている。教会が扉を開き、外の世界に手を差し伸べるのに、彼らは貢献できるのです」とこの分野での若者の役割を強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2018年10月20日