☩会議目前、教皇、「聖職者による性的虐待は緊急を要する課題」と訴え、支援団体も声明(Crux)

(2019.2.17 Crux Senior Correpodent  Elise Harris )

 ローマ発-教皇フランシスコは17日の主日の正午の祈りで、21日から始まる”性的虐待サミット”が「聖職者による性的虐待に”緊急”対応する会議となる」ことに強い希望を表明するとともに、サミットのために祈るよう、全世界のカトリック信徒たちに求めた。

 「木曜日から次の日曜日にかけて、教会における未成年者保護を議題とする全世界の司教協議会会長との会合が、バチカンで開かれます」と述べた教皇は、このサミットを「現代の緊急課題に直面する司牧者の責任をもった力強い動き」と強調した。教皇のこの訴えは、米国のセオドア・マカリック前ワシントン大司教の性的虐待の罪による司祭職はく奪をバチカンが16日に発表した翌日になされた。

 教皇が「何かの決定を下す会議ではなく、司牧的な集まり」とする、このサミットには、世界の指導的立場にある高位聖職者、主要修道会の総長、そして性的虐待の被害者たちが出席する。教皇や何人かの会議関係者はこれまで、「この会議に対して過大な期待が寄せられている」と苦言を呈し、会議の目標は「大きな変化を引き起こすような結果を出すことではなく、少なくとも出席者全員が虐待問題で共通の認識をもつこと」と期待先行にブレーキをかけている。

 だが、虐待の被害者も含めて多くの人々は、この問題に行動をもって応えることを求めており、16日に発表されたマカリックの司祭職はく奪を「性的虐待だけでなく、その隠蔽にも厳罰を持って臨む動きの始まり」と見ている。

 マカリックの司祭職はく奪発表の翌日の17日、被害者支援グループ「 the Ending Clergy Abuse (ECA)」は声明を発表し、サミットに関して、「会議に出席予定の多くの司教たちは、児童に対する性的犯罪を隠蔽してきた」とし、「もしも、そうした司教たちが自身のための隠蔽を教皇から認められるなら、性的加害者に対する『zero tolerance(例外なき断固とした処分)』は一体、何の役に立つのか」と疑問を投げかけた。

 「何年もの間、司教たちや歴代の教皇たちはマカリック前枢機卿が性的虐待者だと知っていたか、さもなければ知っているべきでだった」と批判し、マカリックの司祭職はく奪は「遅すぎる決定」であり、彼のために隠蔽に関わった人々への処罰を考慮しておらず、これまで彼を昇進させ続けたのは「隠ぺいを続けさせる」に過ぎなかった、と関係者がこれまで彼を放置していたことも合わせて批判した。

 そして、隠ぺい問題に触れないなら、教皇は必然的に、高位聖職者たちに対して、適切な注意を払わなかった場合に「結果責任はない」とする書簡を送ることになる、と警告し、「『教皇が、性的犯罪を隠蔽した者に対して司祭職はく奪をもって対処する」ということを司教たちが知った場合に限って、教皇は(注:隠ぺい問題への)行動を強いられるだろう」と述べている。

 同じく虐待被害者の支援、調査を進めているグループ「Bishop Accountability(BA=司教の説明責任)」も17日、マカリック処分に関する声明を出し、大きな国際的圧力を受けて、教皇は「遅ればせながら、正しいことをなさった」とする一方で、「マカリックの司祭職はく奪は、単なる第一歩」であり、「これまでの教会の対応を嘆き、懐疑的になっている人々に対して、教皇は『今回の処分で終わりではない』ことを証明せねばならない。性的虐待をしたことが知られている他の司教たちについても、速やかに司祭職をはく奪する必要がある」と強調。

 さらに教皇に対して、「マカリックについて何を、いつ知ったのか」確認することを求め、マカリック事件について、今回の処分で調査を終わらせず、バチカンの幹部たちも含めた徹底調査のさらなる実施、隠蔽した者に対する処罰と透明性の確保、訴追を確実なものとする「組織的変革」を強く要請した。

 BA、ECAはそれぞれ、今回のサミットについて「一石を投じる」ため、毎日のバチカンの公式会見を受けた会見を継続する予定だ。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年2月19日